ICT環境構築コラム
電子黒板の書き込み、なぜ少し遅く感じる?
私自身、講義で電子黒板を使う機会があります。
資料を映したり、画面を拡大したり、その場で書き込みをしたり。
電子黒板は非常に便利です。
ただ、一つだけ以前から気になっていることがありました。
「文字を書いたとき、ほんの少し遅れて線がついてくる気がする。」
もちろん、実際にはほんの一瞬です。
普通に画面を触っているだけなら、ほとんど気にならないレベルかもしれません。
ところが、筆者の場合、緊張感のある環境下で、講義や講演をしながら文字を書くと、この「ほんの少し」が妙に長く感じることがあります。
特に、
- 漢字を続けて書く
- 数式を書く
- 図を描く
- 話しながら素早く板書する
ときです。
普通のホワイトボードなら、ペンを動かした場所にそのまま線が残ります。
ところが電子黒板では、わずかながら、
「自分の手が先に動き、線が後から追いかけてくる」
ように感じることがあります。
そこで、「この違和感は何なのだろう?」と思い、電子黒板の「書き込み遅延」について調べてみました。
1.電子黒板の「書き込み遅延」とは?
普通のホワイトボードの場合、非常に単純です。ペンを動かすと、その場所にインクが付きます。
一方、電子黒板では、
▼
センサーが位置を読み取る
▼
機器が情報を処理する
▼
画面に線を表示する
という処理が行われます。このため、原理上はどうしてもわずかな時間差が発生します。
この時間差が一般に、「レイテンシー(Latency)= 書き込み遅延」と呼ばれるものです。
最近の電子黒板は、この性能がかなり向上しています。
例えばBenQ Boardでは、機種によってタッチ応答速度として数ms(ミリ秒)レベルの数値が公表されています。ミライタッチでも、ペンの動きを予測する処理などを採用し、より自然な書き味を実現する工夫がされています。
つまり、最近の電子黒板が極端に反応の遅い機械というわけではありません。
では、なぜ講義をしていると気になるのでしょうか。
2.数ミリ秒なのに、なぜ講義では長く感じるのか
ここが、実際に使っていて一番興味深いところでした。
例えばマウスでボタンをクリックするときなら、多少の遅延があってもあまり気になりません。
ところが「文字を書く」という動作は違います。自分の手とペン先、そして線の動きを、人間はほぼ同時に見ています。
しかも講義の場合、
という動作を非常に短い間隔で繰り返しています。
そのため、ペン先と線の動きがほんの少しずれるだけでも、「自分の手の感覚と画面表示が一致していない」ように感じやすいのだと思います。
特に違和感が出やすいのが、
- 速く文字を書く
- 小さい文字を書く
- 漢字を書く
- 数式を書く
- 円や矢印を描く
といった場面です。
講義をしながら板書すると、文字を一文字ずつ丁寧に書くわけではありません。
話のテンポに合わせて、かなり速く書くことがあります。
そのため、スペック表では「数ミリ秒」の世界でも、実際の板書では思った以上に存在感がある。これが、私が実際に使って感じたことでした。

3.実は「書き味」を決めるのはタイムラグだけではない
調べていくと、もう一つ分かったことがあります。
電子黒板の書きやすさは、「応答速度○ms」だけでは判断できないということです。いくつかポイントがあります。
ペン先と線の位置
画面表面のガラスと液晶の間に距離があると、ペン先と実際の線が、ほんの少し違う位置にあるように見えることがあります。特に画面を斜めから見ると、この差を感じやすくなります。
最近の製品では、液晶とガラスとの距離を小さくするボンディング技術などを採用し、この違和感を減らしている機種もあります。
つまり、遅延が小さくても、線の位置がずれて見えれば書きにくいということです。
手を画面につけて書けるか
これも意外に重要です。人は紙に文字を書くとき、自然に手の一部を紙につけます。
電子黒板でも同じように書こうとすると、機種やアプリによっては手をタッチとして認識してしまうことがあります。
そのため、ペンと手のひらをきちんと識別できるかも書き味に影響します。
細かい文字を書けるか
プレゼン資料に丸を付ける程度なら、多くの電子黒板で問題ありません。
しかし講義では、数式、漢字、添削、図形、グラフなど細かい書き込みをすることがあります。この用途になると、製品による違いを感じやすくなります。
4.もう一つのタイムラグ。「書き始めるまで」
そして実際の授業では、もう一つ無視できない「時間」があります。
普通のホワイトボードなら、
ペンを取る ➔ 書く
これだけです。
電子黒板の場合、
という操作が必要になる場合があります。
一つ一つは数秒です。
でも、授業をしていると、この数秒が意外と長く感じます。
例えば学生から質問が出て、「ちょっとここを書いて説明しよう」と思ったとき。
普通のホワイトボードなら、その瞬間にペンを取って書けます。電子黒板では、一度画面を切り替えなければならない場合があります。
私はこれも、電子黒板における広い意味での「タイムラグ」だと思っています。
5.では、ホワイトボードの方が優れているのか?
ここまで読むと、「それなら従来のホワイトボードでいいのでは?」と思うかもしれません。しかし、そう単純でもありません。
電子黒板には、従来型ホワイトボードではできないことが数多くあります。
例えば、
- PowerPointへ直接書き込む
- PDFに説明を書き込む
- 写真を拡大する
- 動画を再生する
- Webページを見せる
- 書いた内容を保存する
- 授業後に学生へ共有する
- オンライン参加者と同じ画面を見る
といったことです。これは非常に便利です。
つまり電子黒板は、「ホワイトボードをデジタル化したもの」というより、「教材表示・映像・板書・共有を一つの場所にまとめる道具」と考えた方が、その良さを理解しやすいと思います。

6.だから、「電子黒板+ホワイトボード」という考え方もある
実際に講義で使う立場から考えると、私は、「電子黒板があるなら、ホワイトボードはいらない」とは思いません。むしろ、両方あった方が便利な場面があります。
例えば、以下のような使い分けです。
【電子黒板】
|
【ホワイトボード】
|
特に便利なのが、「残しておきたい情報を、電子黒板とは別の場所に置いておける」ことです。
電子黒板では次の資料を表示すると、当然画面が切り替わります。一方、横にホワイトボードがあれば、授業の最後まで残しておきたい公式やキーワードは、そのまま板書しておけます。
電子黒板は「置き換え」ではなく「追加」と考えてもいい
電子黒板導入というと、「古いホワイトボードを撤去して、電子黒板に交換する」と考えがちです。
しかし、授業の現場では必ずしもそれが正解とは限りません。
例えば、
中央:電子黒板
左右:ホワイトボード
という構成もあります。
電子黒板で教材を表示しながら、横のホワイトボードで補足説明をする。場合によっては、この方が授業はスムーズです。
電子黒板を選ぶとき、一度「普通に文字を書いてみてほしい」
電子黒板の比較では、画面サイズ、4K、OS、カメラ、マイク、スピーカー、タッチ点数などに目が行きます。もちろん重要です。
しかし、授業で使うなら、ぜひ一度、普段授業をしている速度で文字を書いてみてください。
特に、
- 漢字を一文書く
- 数式を書く
- 円を描く
- 矢印を書く
- 書いてすぐ消す
- 資料を表示しながら書く
まで試してみることをおすすめします。
「タッチ対応」というスペックだけでは見えない違いがあります。
まとめ|「数ミリ秒」が気になったことから考えたこと
電子黒板を使って講義をしていて、「ほんの少し、文字が遅れてついてくる気がする」という小さな違Layout和感がありました。
そこで調べてみると、電子黒板では各メーカーが書き込み遅延を小さくするため、さまざまな工夫をしていることが分かりました。最近の機種はかなり進化しています。
それでも、実際の授業で感じる「書きやすさ」は、カタログ上の数字だけでは決まりません。
タイムラグ。ペン先との位置。手のひらの認識。細かな文字。そして、書き始めるまでの操作。
こうしたもの全部を含めて、「書き味」なのだと思います。
そしてもう一つ。
電子黒板が進化したからといって、ホワイトボードをすべて電子黒板に置き換える必要もありません。
電子黒板には電子黒板の良さがあります。ホワイトボードにはホワイトボードの良さがあります。
大切なのは、
どちらが優れているかではなく、授業のどの場面で、どちらを使うのか。
ということではないでしょうか。
電子黒板を導入するときには、機種だけでなく、「その後の授業をどうするか」まで一緒に考えてみることをおすすめします。
※電子黒板の書き込み遅延や操作感は、機種、アプリケーション、接続端末、OSなどによって異なります。導入検討時にはメーカー公表値だけでなく、可能であれば実機での確認をおすすめします。
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