人への投資③|学んだ人が、道具を使いこなす。人材×デバイスで考える生産性向上

「人」だけでも「道具」だけでも生産性は上がらない。
学びと最新デバイスの掛け合わせがもたらす本当の業務効率化

これまで2回にわたり、「人への投資」について考えてきました。

第1回では、OJT・OFF-JTやリスキリング、助成制度など、中小企業の人材育成をデータから見ました。第2回では、東京商工会議所を例に、研修や経営相談など、社外の知識を取り入れる方法を紹介しました。

では、人が新しい知識を身につければ、それだけで生産性は上がるのでしょうか。もちろん、それだけではありません。知識を得た人が、実際の仕事で使える道具や環境も必要です。

「人への投資」と「適切なデバイス(道具)」が揃って初めて、真の生産性向上が実現する。

2026年版中小企業白書でも、中小企業の生産性向上にはAIやデジタル化による労働投入量の最適化が重要とされ、約3割の中小企業がAI活用に取り組んでいます。同時に、デジタル化の効果を高めるには、従業員向けのIT研修や勉強会、部門間連携が有効とされています。つまり、「人」と「デジタル」は別々の話ではありません。

「昭和型営業」を否定するだけでは意味がない

前回の研修で、社員から「量や根性だけでなく、仕事の質を考える機会になった」という感想がありました。確かに、「100件電話した」「20社訪問した」という行動量だけを追う営業には限界があります。ただ、行動量が不要になったわけでもありません。変えるべきなのは、量だけで評価することでしょう。

例えば営業なら、アプローチ件数だけでなく、商談化率、見積化率、受注率、粗利益、営業工数などを一緒に見ます。100件接触して1件受注するのと、60件に絞って2件受注するのでは、後者の方が少ない時間で成果を出しています。

これからの生産性向上の視点

「どれだけ働いたか」ではなく、「限られた時間でどれだけ価値を生んだか」を見る。社員に「もっと考えて効率よく働こう」と言うだけでは人に頑張らせるだけになるため、ここでデバイスやITの支援が必要になります。

大型モニターは、本当に生産性を上げるのか

例えばモニター。「大きければ見やすい」というだけなら、生産性とは少し遠い話です。ところが、大型表示環境については興味深い研究があります。

Microsoft Researchは、15インチの通常画面と、42インチ相当の大型表示環境を使い、Web検索、Word、PowerPointなどを組み合わせた複雑なオフィス作業を比較しています。

Microsoft Researchによる作業比較実験データ
  • 平均作業時間:127秒 → 116秒に短縮(9%を超える生産性向上)
  • 被験者の選好:15人中14人が大型表示環境を支持
  • 理由:画面切り替え(開く・閉じる・前面へ出す)の無駄なウィンドウ操作が大幅に削減されるため

仕様書を見ながら見積を作る、Teamsを表示しながら資料を見る、ExcelとWebサイトを横に並べる。大型モニターの本当の意味は、「大きく見せること」より「情報を同時に視界に並べられること」にあります。

大型モニターによる業務効率化

会議室では「全員が同じものを見る」効果もある

大型画面には、もう一つ別の使い方があります。会議や共同作業です。

2021年に発表された72人を対象とする研究では、50インチの大型ディスプレイを使った共同作業について、1台の画面を共有した場合と複数画面を使った場合を比較しています。結果として、1台の共有画面(平均24.8分)の方が、複数画面(27.5分)よりも約2.7分(約9.7%)短い時間で作業を終え、得点も高くなりました。

モニター設置は「買って終わり」ではない

複数モニターのシステマティックレビューでも作業効率向上のエビデンスがある一方、配置によっては首への負担が増すことが指摘されています。サイズ、視聴距離、高さ、部屋の形、接続、Web会議音響まで総合的に設計して初めて、真の「仕事の道具」になります。

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PCも「速い機械を買う」だけではない

PCも同じです。CPUやメモリを新しくすれば、それだけで生産性が上がるとは限りません。

2025年版小規模企業白書では、デジタル化が進んでいる企業ほど、売上・コスト・人材面で「効果を感じている」とする割合が高く、顧客データの一元管理やペーパーレス化などが業務効率化につながる可能性が示されています。

中小企業庁が紹介する企業事例では、デジタルツール導入後に社員1人当たり売上高8.6%増、労働時間15.9%減を実現した製造業の例もあります。「PCを新しくした」単体ではなく、デジタルを使って仕事の流れそのものを変えた結果である点が重要です。

ヘッドセットも「周辺機器」では済まない

Web会議が増えると、音の問題も無視できません。

Jabraが2024年にナレッジワーカー2,000人を対象に行った調査では、Web会議などの音質が悪い場合、55%がストレスが増える、52%が集中しにくくなる、36%が質の高い仕事をしにくくなると回答しています。

高価なヘッドセットを全員に配ればよいわけではなく、一人で集中するのか、周囲に人がいるのか、自席か会議室かなど、仕事のシチュエーションに合わせて道具を選び、正しく使えることが不可欠です。

公的データも「人+設備」の方向を示している

2025年版小規模企業白書では、生産性向上策の中で「デジタル活用や設備投資など、投資を伴う業務プロセスの改善・効率化」が最も多く挙げられています。そして2026年版中小企業白書も、生産性向上にはAI・デジタル化だけでなく、それを使う社員への研修や組織内連携が重要だとしています。

【本シリーズ(全3回)が示す生産性向上の循環】

研修・外部知見で学びを得る(人への投資)
➔ 仕事に合った最適な道具を選ぶ(モノへの投資)
➔ 道具を使いこなし業務プロセスを変える
➔ 同じ時間でより高い付加価値を生む

「人への投資」の先に、生産性向上がある

伊藤サプライでも、社員が研修や外部の専門家から知識を得る機会を増やしています。その目的は、「研修を受けた会社になること」ではありません。

得た知識を使って、PC、モニター、AV機器などがどんな仕事に、どう役立つのかを考えられるようになること。画面や機器を見直し、お客様にも単に製品を届けるだけでなく、「その道具をどう使えば仕事が少し良くなるのか」まで考える。それができれば、人への投資が自社の中だけで終わらず、お客様の生産性改善にもつながります。

一社の数%の改善は小さく見えるかもしれません。しかし、人手不足が続く日本で、一社一社が「人にもっと頑張ってもらう」のではなく、知識と道具の組み合わせで付加価値を高めることができれば、その積み重ねは社会全体の生産性向上にもつながります。

・人を育てる。

・良い道具を選ぶ。

・使い方を変える。

・そして、同じ時間でより大きな価値を生む。

人への投資と設備への投資を、別々に考えない。それが、これからの生産性向上の一つの考え方だと思います。

【全3回シリーズ完結】ご愛読ありがとうございました

伊藤サプライでは、オフィス家具、PC、大型モニター、電子黒板、Web会議環境、防災用品など、「人」が最大のパフォーマンスを発揮するための最適な機器選定から納品・設置手配まで一括でサポートしております。

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全3回シリーズ一覧
第1回:データと支援制度 ➔ 第2回:東京商工会議所の活用 ➔ 第3回:人とモノ、生産性向上(本記事)

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