防災備蓄の保管場所・管理方法|100人で水900kg、分散保管と期限管理を解説

【連載 第3回】防災備蓄の保管場所、どう決める?100人で水900kg|搬入・分散保管・期限管理の実務

【連載】企業の防災備蓄・必要量計算(第3回/全3回)

100人分の水は約900kg。
買うことより、「その後」の方が大変かもしれません。

前回までの記事では、企業の防災備蓄について、「なぜ3日分なのか」「水・食料・トイレは実際にどれくらい必要なのか」を考えてきました。

では、必要量を計算して、見積もりを取って、発注すれば終わりでしょうか。実は、ここからが大変です。

例えば100人規模の事業所なら、東京都の目安である1人9Lをもとにすると、水だけで900L。2L×6本=12L入りのケースなら、単純計算で75ケースになります。水だけで約900kgです。

問題は、その75ケースを、誰が、どこから、何階まで運ぶのでしょうか。そして、5年後、10年後、その75ケースを誰が入れ替えるのでしょうか。

防災備蓄は「商品選び」だけでは完成しません。搬入・保管・配布・期限管理・入替えまで決めて、初めて“使える備蓄”になります。

1.防災備蓄は、購入した瞬間から「物流」の問題になる

まず、保存水だけを考えてみます。

従業員数 3日分の水 12Lケース換算 水の重量の目安
30人 270L 約23ケース 約270kg
50人 450L 約38ケース 約450kg
100人 900L 75ケース 約900kg
300人 2,700L 225ケース 約2.7t

※1人9L、1ケース12Lとして単純計算。梱包材等の重量は含みません。

100人でも75ケース。非常食、簡易トイレ、毛布、衛生用品、ヘルメットなどを加えれば、当然さらに増えます。

ここまで来ると、通販で商品を選んで「購入」ボタンを押すだけでは済みません。例えば事前に、こんなことを確認する必要があります。

  • トラックをどこに停められるか
  • 搬入口はどこか
  • 台車は使えるか
  • エレベーターに載せられるか
  • 階段による荷揚げが必要か
  • 納品できる時間帯は決まっているか
  • 75ケースを一時的に置ける場所があるか

学校や幼稚園であれば、児童・園児がいる時間帯に大量の荷物を搬入できないこともあります。オフィスビルなら、搬入口の予約や貨物用エレベーターの利用ルールがあるかもしれません。防災備蓄は、「何を買うか」と同時に「どう入れるか」まで決めておく必要があります。

100人分・200人分になると、どのくらいの荷物になる?

人数と現在の備蓄状況から、必要数量と概算のお見積りを整理します。

▶ 防災備蓄の数量・搬入について相談する

2.「防災倉庫に全部入れる」が、いつも正解とは限らない

一か所にまとめれば、管理は楽です。在庫数も賞味期限も確認しやすくなります。しかし、災害時まで考えると、別の問題が出てきます。

例えば、
・倉庫までの通路が使えない
・エレベーターが停止する
・備蓄場所の鍵を持つ担当者が不在
・備蓄庫そのものが被害を受ける
・10階の社員が1階の倉庫まで水を取りに行かなければならない
といったケースです。

『災害備蓄管理士』のテキストでも、備蓄場所について、設置場所や数量だけでなく、鍵の管理、耐震・耐火、通気、表示、温度などまで確認するよう整理されています。また、管理面でも保存期間、管理記録、災害時の配布、担当者交代時の引継ぎまで確認事項とされています。

つまり、「物がある」だけでは足りません。災害発生時に、その物までたどり着けるか。ここまで考える必要があります。

3.実際の企業では「分散備蓄」という考え方が使われている

備蓄を一か所に集中させるのではなく、防災倉庫+各フロアのように分散して置く方法があります。

添付の『災害備蓄管理士』テキストでも、企業事例として、防災倉庫とは別に各階のエレベーターホール等へ備蓄品を分け、さらに平台車を使って移動しやすくしている例が紹介されています。東京都も、事業者の実例として「数か所に分けて保管」「各フロアでの備蓄」「空きスペースへの分散管理」など、さまざまな分散備蓄事例を公開しています。

例えば100人の会社であれば、

保管場所 役割・備蓄品の例
防災倉庫 保存水・非常食・簡易トイレなどの主要在庫
各フロア 当面使用する水・食料・ライト・簡易トイレ
個人のデスクやロッカー ヘルメット、歩きやすい靴、モバイル電源など

というように役割を分ける方法があります。大切なのは「全部分散すればよい」ということではありません。数量管理しやすいものはまとめる。すぐ使うものは近くに置く。このバランスです。

4.東京都の監査が教えてくれる「あるのに使えない」という問題

もう一つ見落としやすいのが、購入後の管理です。東京都の都立学校に対する監査では、実際に災害用備蓄品について、

  • 備蓄品一覧への記載漏れ
  • 消費期限・使用期限等の記載漏れ
  • カセットボンベの使用期限切れ
  • 食料の保証期限切れ
  • 非常用発電機の習熟訓練をしていない
  • 毛布について必要数量を確認していない

といった事例が確認されています。

これは学校だけの特殊な問題でしょうか。おそらく、企業でも同じことは起こり得ます。5年前に担当者が購入した。担当者は異動した。倉庫の奥に段ボールが残っている。「確か防災用品があったはず」。

でも、何が、何個、どこにあり、いつまで使えるのか分からない。これでは、備蓄していても十分に機能しません。防災備蓄で重要なのは、「買ったかどうか」ではなく、「今日災害が起きても使える状態かどうか」です。

5.賞味期限だけを見る「Excel管理」では足りない

防災備蓄台帳を作っている会社でも、「商品名」「数量」「賞味期限」だけを記録しているケースがあります。ですが、実務ではもう少し情報が必要です。例えば、

管理項目 確認内容
品名 保存水・非常食・簡易トイレなど
数量 現在庫数
必要数量 現在の従業員数等から算出
保管場所 ○階倉庫、○階給湯室など
賞味・使用期限 年月
管理責任者 担当部署・担当者
最終点検日 最後に現物を確認した日
次回点検 次に確認する時期
入替予定 発注・交換予定
備考 箱破損、移動、使用等

特に重要なのが、「保管場所」と「現物確認」です。台帳上は100箱あっても、実際に数えてみると95箱しかない。移転やレイアウト変更で、別の倉庫に移されていた。こうしたことも起こります。

『災害備蓄管理士』テキストでも、賞味期限等をリスト化するだけでなく、棚卸しや管理記録を残すことが重要とされており、企業事例では期限前の案内、棚卸し、入替品の回収・食品ロス対策まで一連の管理として紹介されています。

6.「5年保存」だから、5年間放置していいわけではない

5年保存の水や非常食を買った。すると、「次に見るのは5年後」となりがちです。

しかし、その5年間に、社員が80人から100人になっているかもしれません。オフィスのフロアが増えているかもしれません。保管場所が変わっているかもしれません。簡易トイレを別用途で使用して在庫が減っているかもしれません。担当者が退職しているかもしれません。

ですから、保存期間とは別に定期点検のサイクルを設定しておくことをおすすめします。伊藤サプライで考えるなら、例えば、

春:人数を確認する
新入社員・退職・異動などを反映し、「現在何人分必要なのか」を見直す。

夏~秋:備蓄庫を実際に見る
防災の日などをきっかけに、数量、期限、保管場所、箱の状態などを現物確認する。

期限の6~12か月前:次の入替えを考える
予算化、商品比較、発注、搬入日程を逆算する。

このくらいであれば、防災担当者だけに過大な負担をかけず運用できます。

7.ローリングストックも「古いものから」が基本

家庭防災ではよく知られるようになった「ローリングストック」。備蓄しているものを普段から消費し、その分を買い足していく考え方です。

『災害備蓄管理士』テキストでも、古い備蓄から消費して新しいものを補充することや、防災訓練などで実際に備蓄食を食べることが紹介されています。

ただし、100人、300人という法人備蓄では、すべてを家庭と同じようにローリングさせるのは容易ではありません。そこで、

  • 社内防災訓練で試食する
  • 期限が近いものを社員へ配布する
  • 更新時期を複数年に分散する
  • 保存期間の異なる商品を組み合わせる

など、会社ごとに「入替えやすい仕組み」を決めておくことが現実的です。

8.100人分の備蓄を考えるなら、「商品名」より先に教えてほしいこと

伊藤サプライに防災備蓄をご相談いただく際、商品を決めていただく必要はありません。むしろ、先に知りたいのはこちらです。

  1. 何人いるか
  2. 今、何があるか
  3. どこに置いてあるか
  4. いつ期限が来るか
  5. 搬入条件はどうなっているか

ここまで分かれば、「全部買い直す」のではなく、今ある備蓄を活かしながら、不足しているもの・期限が近いものだけを整理することができます。

伊藤サプライでは現在、防災備蓄について、既存在庫の確認、不足品の整理、複数メーカーからの商品比較、見積、搬入・納品まで一連で対応しています。必要に応じて備蓄庫や搬入経路の現地確認にも対応しています。

まとめ|防災備蓄は「購入」ではなく「運用」まで考える

3回にわたって、企業の防災備蓄について考えてきました。

第1回では、なぜ3日分なのか。
第2回では、実際に何が、いくつ必要なのか。
そして今回考えたのが、それを、どうやって会社の中に実装するのか。です。

100人なら、水だけで900kg。それを搬入し、置き場所を決め、必要なときに取り出せるようにし、期限を管理し、人数が変われば数量を見直し、数年後には入れ替える。

ここまで含めて、防災備蓄です。

商品を安く買うだけなら、多くの選択肢があります。しかし、「うちの場合、何を、何個、どこに置けばいい?」というところから考えるのは、意外と大変です。

伊藤サプライでは、学校・官公庁・研究機関・企業への物品納入で培ってきた経験をもとに、商品が決まる前の段階からご相談をお受けしています。今年の防災備蓄、商品を探す前に、まず「今あるもの」を一度整理してみませんか。

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「倉庫に何があるか分からない」からでもご相談ください。人数・現在の備蓄・期限を確認し、不足分と入替えが必要なものだけ整理します。

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  • 保管場所も含めて考えたい
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