これまで2回にわたり、防災用ヘルメットについて考えてきました。
第1回では、国家検定、安全性能、収納性などの選び方。
第2回では、フラットメット3、Osamet、IZANO2などの具体的な製品比較を行いました。
では、製品を決めたら終わりでしょうか。実は企業防災では、ここからが重要です。何個買うのか。どこへ置くのか。誰が使うのか。いつ点検するのか。地震が起きたとき、本当に取り出せるのか。今回は「買った後」のヘルメットについて考えてみます。

災害備蓄を勉強すると、「商品」より先に「誰が使うか」が出てくる
現在、伊藤サプライでは複数の従業員が災害備蓄管理士の資格取得に向けて勉強しています。その教材を読んでいて改めて感じるのが、「備蓄=商品を人数分買うこと」ではないということです。
備蓄品を「災害対策本部用」「帰宅困難者用」「徒歩帰宅者用」など、役割によって分けて考える備蓄品リストがあります。その中でヘルメットは、「災害対策本部」と「徒歩帰宅者」に備える品目として掲載されています。これはなかなか興味深い考え方です。
例えば同じ会社でも、
| 人・役割 | ヘルメットを使う場面 |
|---|---|
| 災害対策担当者 | 建物内点検、避難誘導、備蓄品配布など |
| 一般従業員 | 落下物対策、建物内移動・避難 |
| 徒歩帰宅者 | 落下物や余震がある中での屋外移動 |
| 来訪者 | 発災時に社内に滞在していた場合 |
| 復旧担当者 | 発災後の施設確認や片付け |
となります。つまり、単純に社員数だけを見るのではなく、「誰が、発災後にどんな行動をするか」から必要数を考える方が実務的です。
「倉庫に100個」より、「必要な場所にある100個」
そして、もう一つ重要なのが保管場所です。「備蓄品は、誰でもすぐに使える場所に保管しよう」という考え方が大事です。
さらに、高層ビルではエレベーターが停止する可能性を考え、備蓄品を一か所へ集中させず、複数フロアへ分散する考え方も紹介されています。ヘルメットも「分散して備える物品」の例に挙げられています。
ここはヘルメットと非常に相性の良い考え方です。大きな地震が起きた後に、「防災倉庫まで取りに行ってください」では、その途中に危険があります。したがって会社での保管方法は、例えば次のように分けられます。
| 保管方法 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 各自のデスク・引き出し | すぐ取り出せる | 収納できる製品が限られる |
| 部署ごとの書棚・キャビネット | 管理と即応性のバランスが良い | 誰の分かを明確にする |
| 各フロアに分散 | エレベーター停止時にも対応しやすい | 在庫管理が必要 |
| 防災倉庫へ集中 | 数量管理しやすい | 発災時に取りに行けない可能性 |
| 災害対策本部用を別管理 | 対応要員が確実に使える | 一般従業員分とは分けて考える |
だから「薄く収納できる」は単なる省スペースではない
第2回で折りたたみヘルメットの収納性を比較した理由も、ここにつながります。伊藤サプライがお客様へ提出した実際の比較提案では、ミドリ安全「フラットメット3」について、安全性能だけではなく、専用A4箱で書棚やデスク引き出しに整列保管できることを重要な評価ポイントにしました。また、同じ資料ではOsametを薄型A4箱収納、IZANO2を収納袋付きとして比較しています。
これは、「収納スペースを節約できます」だけの話ではありません。例えば、100個を倉庫へ入れるのではなく、各部署の書棚へ20個ずつ置く。各自のデスクへ配る。災害対策本部用だけ別に確保する。という配置がしやすくなります。折りたたみ式の価値は、むしろこちらにあるのかもしれません。

ヘルメットに関する「4つの管理」
資格取得に向けて勉強を進めている中で、伊藤サプライとしてヘルメットについて特に意識したいのは、次の4点です。
| 管理すること | ヘルメットなら |
|---|---|
| 誰のためか | 従業員・対策本部・来訪者など対象を決める |
| どこにあるか | フロア・部署・個人など配置を決める |
| 何個あるか | 在籍人数や配置変更に合わせて数量を更新 |
| 使えるか | 状態確認、交換時期、展開方法を確認 |
備蓄品については「役目・役割を分析して管理する」こと、せっかく備蓄しても迅速に配布できなかったり、責任の所在が不明確になったりしないよう、体系的な管理を行うことが重要とされています。
ここは、商品を販売する側としても耳が痛いところです。「100個納品しました。以上です」では、本当の意味で企業防災を支援したことにはならないのだと思います。
人数だけでなく、部署、フロア、来訪者、災害対策要員まで整理すると、必要数や保管方法が変わることがあります。
配っただけでもダメ。「一度かぶる」が重要
もう一つ、備蓄管理で重要なのが訓練です。用意する対策チェックリストには、備蓄品を事前に従業員へ配布することや、地震を想定した訓練を定期的に実施し、その結果を計画へ反映することなども念頭に入れる必要があります。
ヘルメットで考えれば、箱から出す。展開する。頭に合わせる。あごひもを調整する。折りたたみ式なら再収納する。これを一度やったことがあるか、ないかは大きいと思います。
防災訓練の際に全員が一度かぶってみる。それだけでも、「この人にはサイズが合わない」「組み立て方が分からない」「どこに置いたか知らなかった」といった問題が見つかります。備蓄は、数量表の「○」を埋めるだけでは完成しません。
ヘルメットから会社全体の備蓄を考える
今回3回にわたってヘルメットを取り上げましたが、実は考え方は水や食料、トイレ、毛布なども同じです。
何を買うか。何個買うか。どこに置くか。誰が管理するか。どう更新するか。
防災用品の備蓄を事業継続のための重要な要素として位置付け、限られたスペースでの保管方法や長期的な管理・運用を考える必要性があります。伊藤サプライでも、単に防災用品を販売するだけではなく、「会社の中で本当に使える備蓄になっているか」まで考えられるようにしていきたいと思っています。