ポータブル電源、充電が切れたらどうする?

世界市場から考える「発電機・蓄電池・太陽光」

非常用電源の選び方

コラム

容量だけで選ぶと失敗する? 停電長期化に備える「非常用電源」の選び方
〜 停電後の時間を考える「つくる・ためる・補充する」の役割分担 〜

先日、モバイルバッテリーやポータブル電源について記事を書いていて、ふと気になったことがあります。

「これ、停電が長引いて全部使い切ったら、その後どうするんだろう?」

10,000mAhのモバイルバッテリーも、1,000Wh、2,000Whのポータブル電源も、基本的には電気を「貯めておく」製品です。容量を大きくすれば使える時間は長くなります。しかし、使い続ければいつかは空になります。

普段ならコンセントにつなげば済む話です。でも災害で、そのコンセント自体が使えなかったら?今回は、ここから少し視点を広げてみます。

最初に――伊藤サプライは「ポータブル電源専門店」ではありません

伊藤サプライでは、EcoFlowやSUIDEN(スイデン)、PAOCK(パオック)などのポータブル電源・関連製品について、一部取り扱いが可能です。ソーラーパネルについても取り扱える製品があります。実際、EcoFlowはポータブル電源だけでなく折りたたみ式ソーラーパネルを展開し、PAOCKにもポータブル電源があります。SUIDENにも2,621Wh級の大型ポータブル電源があります。

ただし、当社はこの分野の専門店ではなく、販売実績もまだ多くありません。特に小型発電機については、現在ほとんど取り扱いがありません。

そして、もう一つ。国内大手メーカーなどの一部製品については、AmazonなどのECサイトや家電量販店で購入した方がお得なケースもあります。当社としても、お客様が同じ製品を安く購入できるのであれば、必ずしも伊藤サプライから購入していただく必要はないと考えています。

では、なぜこの記事を書くのか。ポータブル電源について調べていくと、単なる「商品選び」よりも、「停電が長期化したとき、電気をどう確保し続けるのか」という問題の方が重要だと感じたからです。

今回は商品を売ることから少し離れて、過去の震災、世界の市場規模、そして技術の進歩という3つの視点から考えてみます。

過去の震災では、本当に停電が長期化した地域がある

まず確認したのが、過去の大規模災害です。もちろん、大地震が起きたからといって、被災地域全体が何週間も停電するわけではありません。多くの地域では電力会社による復旧が早い段階から進みます。しかし、被害が大きい地域では話が違います。

  • 2016年 熊本地震:最大約47万7,000戸が停電。多くの地域では数日のうちに送電が進みましたが、阿蘇地区などでは高圧発電機車による応急送電が行われました。
  • 2024年 能登半島地震:最大約4万戸が停電。立ち入り困難地域などを除いても、概ね送電が完了するまで約1か月を要しました。
  • 東日本大震災:東北電力管内で延べ約486万戸が停電。3日後には約80%、8日後には約94%まで復旧しましたが、津波などで大きな被害を受けた地域では復旧が長期化しました。

つまり、「停電は数時間で終わる」とは限りません。すると、ポータブル電源を1台置いておけば終わり、という話でもなくなってきます。

災害と停電の長期化

1,000Whが2,000Whになっても、いつかはゼロになる

これは当たり前の話なのですが、意外に重要です。1,000Whより2,000Wh。2,000Whより5,000Wh。容量が大きくなれば、当然使える時間は長くなります。しかし、5,000Whも使えばゼロになります。

そこで考えなければならないのが、「貯めていた電気を使い切った後、どうするのか?」という問題です。調べてみると、現在の非常用電源市場には、大きく3つの方向があります。

① 燃料から電気を「つくる」 ➔ ポータブル発電機
② 電気を「ためる」 ➔ ポータブル電源
③ 太陽光から電気を「補充する」 ➔ ポータブルソーラー

しかも面白いことに、どれか一つだけが伸びているわけではありません。

世界では「つくる・ためる・補充する」が全部伸びている

それぞれの世界市場を調べてみました。

市場 現在の市場規模 将来予測 年平均成長率(CAGR)
① ポータブル発電機 約56.3億ドル
(2026年)
約93.6億ドル
(2034年)
6.56%
② ポータブル電源 約48億ドル
(2026年)
約199億ドル
(2033年)
22.4%
③ ポータブルソーラー充電器 約5.77億ドル
(2026年)
約12.76億ドル
(2030年)
14.1%

※市場調査会社によって対象製品・市場定義・予測期間が異なります。また、ソーラー充電に対応したポータブル電源も存在するため、3市場を単純に合計することはできません。ここでは絶対的な市場規模の比較というより、各技術がどの方向へ動いているかを見るために掲載しています。

ここが今回調べていて、一番興味深かったところです。昔ながらの発電機も伸びている。ポータブル電源は、それ以上の勢いで伸びている。そして持ち運べる太陽光も伸びている。

つまり、「発電機 ➔ ポータブル電源 ➔ 太陽光」と、古い技術から新しい技術へ単純に置き換わっているわけではなさそうです。むしろ、「つくる」「ためる」「補充する」という3つの機能が、それぞれ進化していると考えた方が分かりやすそうです。

① 従来型――燃料から電気を「つくる」

最初は、一番歴史の長いポータブル発電機です。ガソリンやガスなどを燃料にエンジンを動かし、その場で発電します。バッテリー技術がこれだけ進んでいるのだから、発電機市場は縮小しているのではないかと思ったのですが、実際にはそうではありません。世界のポータブル発電機市場は2026年約56.3億ドルから、2034年には約93.6億ドルまで成長すると予測され、年平均成長率は6.56%です。

なぜ古い技術が残るのでしょうか。最大の理由は非常にシンプルです。
燃料があれば、その場で電気をつくれるからです。

ポータブル電源は使い切れば止まります。太陽光は夜には発電できず、天候にも左右されます。発電機なら燃料を確保できている限り、比較的安定して発電を続けられます。冷蔵・冷凍設備、ポンプ、モーター、工事機器など、大きな電力を長時間必要とする用途では、この特徴には依然として大きな意味があります。

【注意】ただし、発電機は「買えば終わり」ではない

燃料の保管・更新・定期点検・試運転が必要なほか、騒音や排気ガスが発生します。そして非常に重要なのが一酸化炭素です。ポータブル発電機は室内や換気の悪い場所では使用できません。災害時に屋内で使用して一酸化炭素中毒に至った事故もあり、NITEも繰り返し注意喚起しています。つまり、「倉庫に発電機を1台置いておけばBCP完成」ではなく、運用まで含めて考える必要があります。

② ポータブル型――電気を「ためて持ち運ぶ」

次がポータブル電源です。こちらの成長はかなり急です。世界市場は2025年約42億ドル、2026年約48億ドル、2033年には約199億ドルに達すると予測され、2026〜2033年の年平均成長率は22.4%です。しかも用途別では、2025年に非常用電源用途が48.6%を占め、電池技術別ではリチウムイオン系が87.6%です。もはや単なる「キャンプ用品」ではありません。

さらに日本市場は、2025年約3億4,560万ドルから2033年約20億6,780万ドルへ拡大し、年平均成長率は26%(世界平均以上)と予測されています。

「ポータブル」と呼ぶには、ずいぶん大きくなった

以前ならスマートフォン、照明、ノートPC程度を動かすイメージが強かったと思います。現在は1,000Wh、2,000Wh級が一般的になり、数千Wh級の製品も登場しています。

  • SUIDEN NPB-24:容量2,621.44Wh、定格出力2,400W(瞬間最大4,000W)、質量約26.5kg。移動できる小型蓄電設備に近いものです。
  • EcoFlow:1,000Wh級、2,000Wh級、さらに4,096Wh級までラインアップ。
  • PAOCK PPS-600:512Wh・定格600VAのポータブル電源。

ここで重要なのはメーカー比較ではありません。「ポータブル電源」という製品カテゴリー自体が大容量・高出力化し、以前なら発電機を検討していた領域の一部にまで蓄電池が入り始めているということです。

③ 太陽光型――電気を「補充する」

知識として役立つのが「ポータブル電源を使い切ったらどうするか?」に対する答えの一つ、太陽光です。

ポータブルソーラー充電器の世界市場も拡大しており、2026年約5.77億ドルから2030年には約12.76億ドル(CAGR 14.1%)へ成長すると予測されています。特に折りたたみ式ソーラーの成長が目立っており、「太陽光発電設備を建物に設置する」のではなく、「太陽光発電そのものを持ち運ぶ」という製品カテゴリーが成立し始めています。

実際、EcoFlowには110W、160Wだけでなく、折りたたみ可能な400W級のポータブルソーラーパネル(約10.2kg)まであります。

太陽光が加わると「ポータブル電源」の意味が変わる

ポータブル電源だけなら「ためる ➔ 使う ➔ なくなる」です。しかしソーラーパネルを組み合わせれば、「太陽光から発電 ➔ ポータブル電源にためる ➔ 夜間や必要な時間に使う ➔ 翌日また発電する」という循環を作ることができます。こうなるとポータブル電源は、単なる大きなモバイルバッテリーではなく、小規模な自立型電源システムに近づいてきます。

ただし、ここには大きな注意点があります。「400Wのソーラーパネル=いつでも400W」ではありません。夜は発電せず、曇りや雨では発電量が激減します。パネルの角度、方角、影、季節、温度でも変化し、ソーラーによる充電時間は天候によって大きく変動します。

さらに法人利用では、「そもそも、どこに広げるのか?」という設置場所の問題もあります。400W級になるとそれなりの面積が必要です。都市部のオフィスや店舗、学校などで、停電時に安全にパネルを広げられる場所があるかの確認が不可欠です。

ソーラーパネルと運用の注意点

3つの技術を比較してみる

ここまで見てきた3方式を、法人の非常用電源という観点から整理してみます。

比較項目 ① ポータブル発電機 ② ポータブル電源 ③ ポータブルソーラー+蓄電池
基本機能 つくる ためる 補充して、ためる
エネルギー源 ガソリン・ガス等 事前に充電した電気 太陽光
停電直後 ○ (試運転・設置後) ◎ (即時利用可) ○
長期停電 ◎ (燃料次第で継続) △ (残量消失で終了) ○ (日照次第)
電力の確実性 ◎ (燃料確保が前提) ◎ (残量の範囲内) △ (天候依存)
高出力機器 ◎ (大型機器可) ○〜◎ (製品による) ○ (蓄電池性能による)
室内給電 ✕ (一酸化炭素中毒) ◎ (完全安全) ◎ (パネルは屋外)
日常管理 燃料管理・定期試運転 定期的な充電確認 充電確認+パネル清掃
最大の弱点 運用負担・騒音・排気 使い切れば終わる 天候に左右される
得意分野 長期・高負荷・確実性 初動・オフィス・通信 中長期の電力補充

この表を見ると、なぜ3つの市場が同時に成長しているのかが分かってきます。発電機は運用が大変ですが確実。ポータブル電源は便利ですが使い切れば終わる。太陽光はその弱点を補えますが天候依存。つまり3つは、「確実性」「使いやすさ」「持続性」を、それぞれ違う方法で実現する技術と考えた方がよさそうです。

「どれを買う?」ではなく「停電後の時間」で考えてみる

法人のBCPとして考えるなら、ここが重要だと思います。

【停電直後】 スイッチ一つでPCやWi-Fi、照明を動かせるポータブル電源が圧倒的に強い。
【停電2〜3日目】 残量が減ってくるため、晴れていればソーラーパネルで補充。
【長期化・悪天候・高負荷】 雨天継続や大型機器(冷蔵設備・ポンプ等)の稼働には発電機の出番。

さらに考えると、必ずしも三択ではありません。「全部組み合わせる」方法もあります。ポータブル電源を中心に置き、晴れた日は太陽光で充電、夜は蓄えた電気を使う。雨天が続いたら発電機を回してポータブル電源を充電し、充電が終われば発電機を止める。こうすれば、24時間発電機を回し続ける必要がなくなり、騒音や燃料消費を大幅に抑えられます。

将来的には、「蓄電池か発電機か」ではなく、「蓄電池を中心に太陽光と発電機をどう組み合わせるか」という考え方が広がっていく可能性があります。

市場が示しているのは「勝者」ではなく「役割分担」

非常用電源の役割分担

今回調べる前は、「バッテリーが進化すれば、いずれ小型発電機はいらなくなるのでは?」とも考えていました。しかし世界市場を見ると、ポータブル発電機(CAGR 6.56%)、ポータブル電源(22.4%)、ポータブルソーラー(14.1%)と、成長速度に差はあれど3つとも成長市場です。これは新しい技術が淘汰しているのではなく、非常用電源市場そのものが役割分担によって再編されていると見るのが自然です。

「何Wh貯めるか」の次を考える

容量を増やすことは重要です。1,000Whより2,000Wh、5,000Wh。でも停電が長期化すればいつかはなくなります。防災用電源で本当に考えなければならないのは、「何Wh用意するか」だけではありません。

「使い切った後、燃料から電気をつくるのか。太陽光から補充するのか。両方を組み合わせるのか。探してそもそも停電時に、何を・何時間・何日間動かし続けたいのか。」

伊藤サプライでもEcoFlowやSUIDEN、PAOCKなど、仕入れ可能なポータブル電源・関連製品はあります。一方で、価格だけを見ればECサイトなどで購入した方が合理的な商品もありますし、当社自身、この分野ではまだ経験を積んでいる途中です。

だからこそ、まず商品ありきではなく、「停電が長引いたとき、どうやって電気を確保し続けるか」から考えてみたいと思います。世界市場で「つくる」「ためる」「補充する」の3つが同時に伸びていること自体が、これからの非常用電源の考え方を示しているのかもしれません。

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