5年と10年、コストはどう違う?会社の防災備蓄で考える「保存水」8商品比較

100人なら75ケース。
5年後、その水を誰が入れ替えますか?

法人向け長期保存水8選|5年・7年・10年・12年・15年を「1人9L」で比較

保存水は、「何年持つか」より「何回入れ替えるか」で選ぶ。前回の記事では、会社の防災備蓄として必要な水の基本を整理しました。
東京都が示す事業所の備蓄目安は、1人1日3L、3日分で9Lです。100人なら900L、300人なら2,700Lになります。また東京都は、備蓄品を被害で一度に失わないよう、数か所に分けて保管することや、賞味期限・保管場所を管理することも勧めています。(防災東京)
では、その大量の水を何年保存の商品で揃えるべきなのでしょうか。
5年で十分なのか。
7年か。
10年か。
あるいは12年、15年まで延ばした方がよいのか。
今回は実際に販売されている8商品を、ケース価格・1本価格・1L当たり価格・1人3日分9Lの価格・保存期間で比較してみます。

結論から|公的な「○年を○%」という正解はない

まず、ここは明確にしておきます。
東京都、農林水産省などの公的資料を確認しましたが、「5年保存を20%、10年保存を70%」といった保存期間別の推奨割合は確認できませんでした。
東京都が示しているのは、まず1人9Lを確保すること、賞味期限に注意すること、分散して保管することです。(防災東京)
農林水産省も、長期保存水について「5〜10年程度」と紹介していますが、何年保存の商品を何割備蓄すべきかまでは指定していません。(農林水産省)

ところが実際の公共調達を見ると、かなり幅があります。
2026年度の農林水産省中国四国農政局の災害備蓄用品調達では、2Lの保存水1,539本、500mLの保存水6,277本について、納入時点で15年以上の保存期間を求めています。しかも2Lは6本ずつ、500mLは24本ずつ段ボールに梱包する仕様です。(農林水産省)
一方、同じ農林水産省でも別の2026年度調達では、2L保存水について賞味期限4年6か月以上を仕様としています。(農林水産省)
つまり、

「長いほど正解」でもなければ、「5年で十分」が正解でもない。

調達規模や更新方法によって選び方が変わる、ということです。

まず8商品を比較

今回は売れ筋ランキングではなく、保存期間の違いを比較するために5年〜15年まで代表的な商品を選びました。
価格は2026年9月確認時点の税込参考価格です。法人向け大量見積、送料、キャンペーン等では実際の購入価格が変わります。

商品 保存期間 容量 参考価格 1本 1L 1人9L 9Lの年換算*
アイリスの保存水 5年 2L×6 1,380円 230円 115円 1,035円 約207円
富士ミネラル 非常用保存水 5年6か月 2L×6 2,130円 355円 約178円 約1,598円 約290円
KFG 純天然アルカリ保存水 7年 2L×6 2,196円 366円 約183円 約1,647円 約235円
IZAMESHI 7年保存水 7年 500mL×24 3,780円 約158円 315円 約2,835円 約405円
EMERGENCY WATER 10年 2L×6 2,592円 432円 216円 1,944円 約194円
高賀の森水 10年 2L×6 3,175円 約529円 約265円 約2,381円 約238円
DSW PREMIUM 12YEARS 12年 2L×6 3,110円 約518円 約259円 約2,333円 約194円
カムイワッカ麗水 15年 2L×6 4,506円 751円 約376円 約3,380円 約225円

*「9Lの年換算」は、9L換算価格を保存年数で単純に割った比較用の数字です。将来の価格変動、搬入・搬出費、人件費等は含みません。

アイリスは公式通販で5年保存2L×6本が1,380円、富士ミネラルは同じ12Lで2,130円です。(アイリスプラザ) KFGの7年保存2L×6本は2,196円、IZAMESHIの500mL×24本は法人通販で3,780円でした。(金城の水)
10年保存ではEMERGENCY WATERが2L×6本2,592円、高賀の森水が3,175円。12年保存のDSWは3,110円、15年保存のカムイワッカ麗水は法人通販で4,506円です。(グリーンケミー)

1.5年保存|まず価格を抑えて3日分を揃える

アイリスオーヤマ「アイリスの保存水」

アイリスの保存水

今回の比較では、単純な水量当たり価格が最も低くなりました。
2L×6本で12L、1,380円。
1L約115円なので、1人3日分9Lでは約1,035円です。(アイリスプラザ)
人数が多く、「まず必要量を確保することを優先したい」という場合には分かりやすい選択肢です。

富士ミネラルウォーター「非常用5年保存水」

富士ミネラルウォーター

同じ5年クラスでも価格は上がりますが、こちらは長期保存を意識した通常より厚いPETボトルと強固な段ボールを採用しています。
水そのものだけでなく、数年間箱のまま保管することまで考えた商品です。(【公式】富士ミネラルウォーター オンラインショップ)
法人備蓄では、この「箱が長期間もつか」という視点も意外に重要です。

2.7年保存|5年より更新回数を少し減らす

KFG「純天然アルカリ保存水 7年」

純天然アルカリ保存水 7年

2L×6本で2,196円。
1人9L換算で約1,647円です。
KFGも長期保存時の衝撃に備えて強化段ボールを採用しており、自治体、官公庁、企業、学校、病院などへの採用実績を公表しています。(純天然アルカリイオン水「金城の華」|株式会社ケイ・エフ・ジー)
5年では交換が早いが、10年以上までは必要ない、という場合の中間的な選択肢です。

IZAMESHI「7年保存水 500mL」

IZAMESHI 7年保存水 500mL

こちらだけ500mL×24本を入れました。
合計容量は同じ12Lですが、1L当たり315円となり、2L商品よりかなり割高です。
それでも500mLには、1人ずつそのまま渡せるという明確なメリットがあります。
避難時、屋外移動時、来訪者への配布などでは2Lより扱いやすい。
したがって、500mLは価格で2Lと競わせる商品ではなく、配布用途で選ぶ商品と考えた方がよいでしょう。(IZAMESHI)

3.10年保存|法人では最も検討しやすいゾーン

グリーンケミー「10年保存水 EMERGENCY WATER」

10年保存水 EMERGENCY WATER

2L×6本で2,592円。
1L216円、1人9Lでは1,944円です。ケースサイズは330×185×320mm、重量約13kgとなっています。(グリーンケミー)
ここで面白いのが、年数で単純に割った場合です。
9L分1,944円を10年で割ると、約194円/年。
5年保存の安価な商品より購入価格そのものは高いものの、交換サイクルを含めて考えると差が縮まります。

「高賀の森水 10年保存水」

高賀の森水 10年保存水

2L×6本3,175円。
保管寸法は278×222×310mm、重量約13kgです。(ミドリ安全.com)
10年保存になると、「水の価格」より「10年間交換しなくてよいことに、どれだけ価値を置くか」という選択になってきます。

4.12年保存|入替作業そのものを減らす

DSW PREMIUM 12YEARS

DSW PREMIUM 12YEARS

2L×6本3,110円。
ケースサイズは327×190×322mm、重量13.5kgです。(船山株式会社オンラインショップ)
1人9L換算では約2,333円。
決して最安ではありません。
しかし12年保存ということは、5年保存水と比べて長期間にわたり交換作業を減らせるということです。
実際、2026年度の自治体調達でも、DSW PREMIUM 12YEARSを参考品として12年以上の保存期間を求める仕様が確認されています。(KKJ)
学校や公共施設のように大量備蓄を長期間管理する施設では、こうした保存期間が重視される理由が見えてきます。

5.15年保存|「交換しない期間」を買う

カムイワッカ麗水 15年保存

カムイワッカ麗水 15年保存

今回比較した中で最も長い15年保存です。
2L×6本、法人通販の確認価格では4,506円。(ASKUL)
価格だけなら高い。
しかし、2026年度の農林水産省の実際の災害備蓄用品調達では、保存水について納入時に15年以上の保存期間を条件にし、カムイワッカ麗水を参考品の一つとして挙げています。(農林水産省)
ここから分かるのは、

長期保存水の価値は「安い水を買うこと」ではなく、入替回数を減らすことにもある。

ということです。
何千本単位の備蓄になれば、古い水を出し、新しい水を搬入し、拠点ごとに振り分ける作業だけでも相当な負担になります。

実は、ケース単位で考えると分かりやすい

今回比較した商品には共通点があります。
2L×6本なら、1ケース=12L。
500mL×24本でも、1ケース=12L。
東京都の目安は1人9Lですから、4人×9L=36L=12Lケース3箱です。
この単位を覚えておくと、法人の備蓄計算がかなり簡単になります。

人数 必要水量 12Lケース換算
4人 36L 3箱
20人 180L 15箱
50人 450L 約38箱
100人 900L 75箱
300人 2,700L 225箱

100人なら75ケースです。
ここまで来ると、5年後に75ケースを交換するのか、10年後なのか、15年後なのかという違いが、商品単価以上に重要になってきます。

段ボールのまま保管できるかも確認したい

大量備蓄では、水を一本ずつ棚へ並べることは通常ありません。
基本的にはケース単位で保管します。
実際、農林水産省の2026年度調達仕様でも、2L保存水は6本を段ボール箱に梱包することを条件にしています。(農林水産省)
また、富士ミネラルやKFGのように、長期保存を意識して強度を高めた段ボールを採用している商品もあります。(【公式】富士ミネラルウォーター オンラインショップ)
つまり商品比較では、水そのものだけでなく、「箱のまま何年間保管する前提の商品なのか」も確認した方がよいでしょう。
なお東京都は、災害によって備蓄品が一度に使用不能にならないよう、数か所に分けて保管することを勧めています。(防災東京)
75ケースを一か所に高く積むより、各フロアや複数の保管場所へ分散する考え方も必要です。

結局、法人は何年保存を選べばよい?

ここまで比較したうえで、私たちは「何年物を何%ずつ買う」という考え方にはしない方がよいと考えます。
公的な根拠がないうえ、保存期間を細かく混ぜるほど賞味期限管理も複雑になるからです。
むしろ、自社の規模と入替負担から、主力にする保存期間を決める。その方が分かりやすいでしょう。

一つの実務的な考え方

事業所の状況 検討しやすい保存期間
小規模・1拠点・更新作業が苦にならない 5〜7年
50〜100名以上・複数フロア・法人の一般備蓄 10〜12年
学校・公共施設・多拠点・大量備蓄 12〜15年
従業員への個別配布用 保存年数より500mLの扱いやすさを優先

これは公的な基準ではなく、今回の商品価格と管理負担を比較した上での実務上の整理です。
特に一般企業では、10〜12年保存を一度比較してみる価値があると思います。
5年保存より購入時の金額は上がっても、交換サイクルを長くできます。

100人の会社なら、初期費用はどれくらい違う?

100人の3日分は900L。12Lケースなら75箱です。
単純に今回の参考価格を当てはめると、

保存水75ケースの参考額
アイリス 5年 約103,500円
EMERGENCY WATER 10年 約194,400円
DSW 12年 約233,250円
カムイワッカ 15年 約337,950円

15年保存は、5年保存より初期費用が約23万円高くなります。
ここだけを見ると5年保存が圧倒的に安い。
しかし、問題はその後です。
5年保存なら15年間で複数回の更新時期が来ます。
そのたびに、
古い水を確認し、
運び出し、
新しい水を搬入し、
各保管場所へ配置する。
この作業を誰が行うのかまで考える必要があります。
したがって、法人では購入金額だけでなく「更新作業を何回行うか」まで含めて比較することが大切です。

一番長い保存水を買えばよいわけでもない

一方で、「では全部15年保存にすればよい」とも限りません。
人数が少なく、毎年備蓄点検を行っている会社なら、5〜7年保存でも十分管理できます。
オフィス移転や人員増減が多い会社なら、15年間同じ数量を固定するメリットも小さくなります。
保存期間が長いほど良いのではなく、

その保存期間を長くするために追加で支払う金額と、交換作業を減らせる価値を比べる。

ここが法人の保存水選びのポイントです。

まとめ|「一番安い」「一番長い」の間に答えがある

長期保存水を比較すると、
5年保存は安い。
10〜12年保存は価格と交換頻度のバランスがよい。
15年保存は大量備蓄の入替負担を大きく減らせる。
という違いが見えてきます。

書籍や公的資料を調べても、「何年保存を何%買うべき」という答えはありません。
実際、国の調達でも5年程度の商品を選ぶ案件と、15年以上を要求する案件があります。(農林水産省)
だからこそ、最初に決めるのは商品ではありません。

何人分か。
何ケースになるか。
どこに置くか。
そして、そのケースを何年ごとに入れ替えられるか。

保存水は、そこまで考えて選ぶものだと思います。

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