会社の防災備蓄、個人配布と一括保管どちらがいい?
メリット・デメリットを比較
企業の防災備蓄を準備するとき、「何を買うか」と同じくらい考えておきたいのが、買った防災用品をどのように管理するかです。
例えば、従業員50人分の非常食や保存水、簡易トイレを購入したとします。50人分を倉庫にまとめて保管するのか。それとも、「あなたの分はこれです」と、一人ひとりに配布して管理してもらうのか。
個人配布なら災害発生時にすぐ使えるというメリットがあります。一方、一括保管なら在庫や賞味期限を管理しやすくなります。
では、企業の防災備蓄ではどちらが適しているのでしょうか。結論からいうと、私たちは「全部個人配布」「全部一括保管」と決めてしまう必要はないと考えています。
- 会社がまとめて管理するもの
- 個人に配布して管理するもの
- 従業員自身に用意してもらうもの
1.そもそも会社はどのくらい備蓄すればいい?
東京都内の企業にとって、まず確認しておきたいのが「東京都帰宅困難者対策条例」です。東京都では、大規模災害発生時に従業員が一斉に帰宅することで、道路や駅周辺が混乱したり、救助・救命活動を妨げたりすることを防ぐため、企業に従業員の一斉帰宅を抑制することを求めています。
そのため事業者には、従業員が事業所内に一定期間待機できるよう、3日分の水や食料などを備蓄することが努力義務とされています。
- 水: 1人当たり1日3リットル、計9リットル
- 主食: 1人当たり1日3食、計9食
- 毛布: 1人当たり1枚
- その他: 簡易トイレ、衛生用品、敷物、携帯ラジオ、懐中電灯、乾電池、救急医療薬品類など
つまり、企業としてはまず「必要な人数分が確保されている状態」をつくることが基本になります。
問題は、その先です。人数分購入した防災用品を、どこに、どのように置いておくのか。ここまで決めて初めて、実際に使える備蓄になります。
2.方法① 防災用品をまとめて保管する(一括保管)
もっとも分かりやすいのが、防災倉庫や社内の保管スペースにまとめて備蓄する方法です。例えば、「保存水はこちら」「非常食はこちら」「簡易トイレはこちら」と品目別に保管します。
一括保管のメリット
最大のメリットは、会社側で管理しやすいことです。例えば保存水なら、「現在何本あるのか」「賞味期限はいつなのか」「不足している数量はいくつなのか」を比較的簡単に確認できます。人事異動や退職者が発生しても、防災用品そのものを移動したり回収したりする必要はありません。特に従業員数が多い企業では、一括管理のメリットは大きくなります。
一括保管のデメリット
一方で、災害が発生したときには配布作業が必要になります。例えば100人が一斉に待機することになった場合、「誰が水を配るのか」「非常食はいつ配るのか」「簡易トイレはどこに設置するのか」といった運用をその場で決めていては混乱します。
また、防災倉庫そのものに入れなくなる可能性も考えておかなければなりません。一か所にすべてを集中させるのではなく、建物の状況によっては複数の場所へ分散して保管することも検討したいところです。
3.方法② 一人ひとりに防災用品を配る(個人配布)
もう一つが、従業員ごとに防災用品を配布する方法です。保存水、非常食、簡易トイレ、アルミブランケット、ヘルメットなどを一つのセットにして、各従業員の机やロッカーなどに置いてもらいます。

実は、公的な防災情報でもこうした管理方法が想定されています。内閣府の「オフィスの防災」では、社員用として備蓄する水、食料、毛布などについて、「各自で管理するようにしてもよい」とされています。(出所:内閣府「オフィスの防災」)
個人配布のメリット
一番のメリットは、災害が起きたときに自分の備蓄品をすぐ使えることです。倉庫まで取りに行ったり、担当者が配布したりする必要がありません。「誰に何個配ったのか」という災害発生時の配布管理も減らせます。特にヘルメットや防寒用品など、発災直後に必要になる可能性があるものは、個人の近くに置いておくメリットがあります。
ただし、個人配布すると「その後の管理」が難しくなる
ここが、実際に防災用品を扱っていると気になるところです。個人に配った瞬間から、防災用品が会社の一括管理から離れていきます。
- 退職・異動した社員の備蓄品の回収忘れや持出し
- 机の下の保存水を日常的に飲んでしまう
- 非常食の賞味期限切れに会社が気づけない
- 毛布やブランケットが別の用途で使われてしまう
実際、伊藤サプライでも過去に防災用品を納入したお客様で、個人用の非常用パックに入っていた保存水だけが普段使いで消費されていたケースがありました。
そのため個人配布方式を採用する場合は、「配ったから管理終了」ではなく、定期的に中身を確認する仕組みまで決めておくことが重要です。
4.方法③ 個人で用意してもらうものもある(個人準備)
さらに、会社がすべて用意するのではなく、従業員自身に準備してもらった方が適しているものもあります。東京都の「事業所防災リーダー」向け資料などでは、従業員自身が準備しておくものとして、歩きやすい靴・常備薬・携帯電話用の予備電源などが挙げられています。(出所:東京都「帰宅困難者対策」関連資料)
これらには個人差があります。常備薬や眼鏡・コンタクト用品、食物アレルギー対応食などは、会社が一律に用意できません。だからこそ、「会社が用意するもの」と「個人に準備してもらうもの」をあらかじめ分けておくことが重要です。
5.比較:伊藤サプライが考える「ハイブリッド型」
各管理方法を比較すると、それぞれに一長一短があります。
| 管理方法 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 一括保管 | 数量・賞味期限を管理しやすい | 災害時に配布作業が必要 |
| 個人配布 | 発災時すぐに使える | 異動・退職・使用・期限切れの管理が難しい |
| 個人準備 | 個人差(アレルギー・持病)に対応しやすい | 本当に準備されているか確認しにくい |
こうして比較すると、どれか一つが絶対的に優れているわけではありません。そこで考えたいのが、3つを組み合わせる「ハイブリッド型」です。

6.もう一つ重要なのが「誰が管理するか」
防災備蓄では、つい商品選びに目が向きますが、実際には運用体制まで決めておく必要があります。
- 誰が数量と人員変動を確認するのか
- 誰が賞味期限を確認するのか
- 誰が補充を発注するのか
- 災害時には誰がどこで配るのか
非常食を5年保存の商品にしたとしても、5年間放置してよいわけではありません。人員、組織、保管場所は毎年変わります。
だからこそ、年に1回(新年度の春や防災の日の秋など)でも、「人数は変わっていないか」「必要数量は揃っているか」「賞味期限はいつか」「保管場所は変わっていないか」「個人配布品は残っているか」を確認する機会を設けることが大切です。
7.まとめ:防災備蓄の「中身」だけでなく「管理方法」もご相談ください
企業の防災備蓄では、「何を何個買えばいいか」が最初の課題になります。しかし、防災用品を揃えた後には、「どこに置くか」「誰が管理するか」「どう配るか」「いつ点検するか」という次の課題が出てきます。
個人配布にも、一括保管にもメリットがあります。大切なのは、どちらか一方に統一することではありません。
- 数量管理が重要なものは「会社で一括管理」
- すぐに必要になるものは「個人の近くに配布」
- 個人差が大きいものは「従業員自身で準備」
防災用品の性質に応じて管理方法を決めておくことが、実際に使える備蓄につながります。
伊藤サプライでは、企業・学校・官公庁などへの防災用品の納入を行っています。非常食、保存水、簡易トイレ、毛布、ヘルメットなどの商品選定だけでなく、必要人数からの数量算定、個人配布と一括備蓄の組み合わせ、保管方法や定期点検・入替えのご提案までトータルで対応しております。
「とりあえず防災用品を買いたい」という段階だけでなく、「今ある備蓄品の管理方法がこれでいいのか分からない」という段階からでもお気軽にご相談ください。
・内閣府「事業所における帰宅困難者対策ガイドライン」
・内閣府「オフィスの防災」
・東京都「帰宅困難者対策」
※各事業所で必要となる備蓄内容・数量は、従業員数、勤務形態、施設、地域、BCP等によって異なります。最新の制度・ガイドラインについては国・自治体等の公表資料をご確認ください。
防災備蓄のご相談・お見積り
「自社に合わせた管理方法を提案してほしい」「個人配布用と会社一括保管用の組み合わせを相談したい」など、ご検討段階からお気軽にご相談ください。
※掲載されている情報は、メーカー資料・公的発表時点の内容です。実際のお見積り時には最新の仕様・在庫をご確認ください。