1人9L、本当に置ける?会社の防災備蓄で考える「保存水」の基本

1人9Lが目安ですが、本当に全社員分を置けますか?
保管場所から考える、法人向け保存水選びの基本。

1人9L、本当に置ける?会社の防災備蓄で考える「保存水」の基本

防災備蓄の水は、一般に「1人1日3L、最低3日分」が目安とされています。
つまり、1人あたり9L。
10人なら90L。
100人なら900L。
300人なら2,700Lです。
数字だけを見ると単純ですが、実際に会社で備蓄しようとすると、最初に出てくる疑問があります。

「そんなに大量の水を、どこに置くのか?」

今回は、そもそも防災用の「保存水」とは何なのか、普通のミネラルウォーターとの違い、必要な量、500mLと2Lの違い、さらにPETボトル・アルミ缶・紙パックまで、防災備蓄用の水について基本から整理します。

1.まず、本当に1人9Lも必要なのか?

農林水産省は、災害時の飲料用・調理用の水として1人1日3L、最低3日分として1人9Lを備蓄する目安を示しています。(農林水産省)
東京都でも、帰宅困難者対策として事業所が備える水について、
1人1日3L × 3日=9L
を目安としています。主食は9食、毛布は1人1枚という考え方です。(防災東京)
したがって、法人の場合はこうなります。

従業員数 3日分の水 2L×6本ケース換算
10人 90L 約8ケース
20人 180L 15ケース
50人 450L 約38ケース
100人 900L 75ケース
300人 2,700L 225ケース

100人の事業所なら、水だけで約900kg。
300人なら約2.7トンになります。
ここまで数字にすると、防災用の水は「何を買うか」だけでなく、「どこに置くか」までセットで考える必要があることが分かります。

2.実際の会社は、本当にこれだけ置いている?

実例もあります。
ALSOKでは、20人分の水と食料を実際に並べた写真を公開しています。
20人分の水は180L。2Lペットボトル6本入りなら15ケースです。
掲載された保管例では、水と保存食を並べた状態で横幅約100cm、高さ約65cmになると紹介されています。(ALSOK(アルソック))
20人でこの量です。
100人になれば単純計算でその5倍になります。
「法律やガイドラインだから9L用意しましょう」と言うだけなら簡単ですが、実際の会社では、
備蓄量より先に、保管場所が問題になる
ことも珍しくありません。

20人分の備蓄例

3.「置く場所がない」は、実際に企業の大きな悩み

これは感覚的な話でもありません。
東京商工会議所が2025年に実施した企業調査では、従業員向けに3日分以上の飲料水・食料を備蓄している企業は約5割でした。
書籍や報告でも、備蓄を進める際の大きな負担として挙げられているのが、保管スペースの確保です。(東京商工会議所)
つまり、

「1人9Lと言われても、そんな場所はない」

というのは、防災担当者だけの特殊な悩みではありません。

だから実際の備蓄では、

防災倉庫にまとめる
各フロアに分散する
書庫やキャビネットの空きスペースを使う
休憩室などに分けて置く
一部を個人備蓄にする

といった工夫が必要になります。
ALSOKも、専用倉庫だけでなく、各デスクや休憩室、空きスペースなどへの保管を例示しています。(ALSOK(アルソック))
「水を何本買うか」ではなく、「どう保管するか」までが水の備蓄です。

4.そもそも「長期保存水」とは?

では、普通の水と「5年保存水」「7年保存水」などは何が違うのでしょうか。
農林水産省によると、一般的なミネラルウォーターの賞味期限が約2年であるのに対し、長期保存水には5〜10年程度のものがあります。(農林水産省)
「長期保存水だから、中に特殊な水が入っている」と思うかもしれません。
しかし、必ずしもそうではありません。
例えば富士ミネラルウォーターの非常用5年保存水では、中身や製法は通常のミネラルウォーターと変わらず、通常より厚みのあるPETボトルと強固な段ボールを採用することで長期保存に対応していると説明しています。賞味期限は製造日から5年6か月です。(【公式】富士ミネラルウォーター オンラインショップ)
つまり保存水を見るときは、
「どんな水か」だけではなく、「どのような容器・包装・品質管理で長期保存を実現しているか」
を見る必要があります。

5.賞味期限を過ぎたら、すぐ飲めなくなる?

水については、
「賞味期限が切れても腐らない」
という話を聞くことがあります。
農林水産省も、賞味期限とは「期待される品質を十分に保持できる期限」であり、期限を過ぎたから一律に飲めなくなるものではないと説明しています。(農林水産省)
ただし、法人や学校の備蓄では、
「まだ飲めそうだから大丈夫」
という管理はおすすめできません。
誰が担当しても判断できるよう、

賞味期限
数量
保管場所
更新時期

を基準に管理する方が現実的です。
長期保存水のメリットは、単に「長く飲める」だけではなく、交換作業そのものを減らせることにもあります。
100人分、200人分となれば、水の入れ替えも相当な作業だからです。

6.1日3Lには「生活用水」は含まれていない

ここも勘違いしやすいところです。
1人1日3Lという数字は、基本的に
飲料用+調理用
です。(農林水産省)
例えば、

トイレを流す
手を洗う
身体を拭く
清掃する

といった生活用水は別に考える必要があります。
したがって、
50人 × 9L=450Lを置けば「水対策完了」
というわけではありません。
さらに、非常食の種類によっても水の必要量は変わります。
ただし、アルファ化米、カップ麺、乾麺など「水を使って食べる食品」を多く備蓄する場合には、9Lでは余裕がなくなる可能性があり、飲むための水とは別に調理用水も消費することになります。
非常食を選ぶ際には、食料だけを見るのではなく、その食品を食べるために何Lの水を使うのかまで確認しておくと安心です。
防災備蓄では、水と非常食を別々に考えない方がよい理由の一つです。

7.500mLと2L、会社ではどちらを備蓄する?

保存水には500mLと2Lの商品が多くあります。
これは「どちらが優れている」というより、用途が違います。

2Lのメリット

  • 大人数分をまとめて管理しやすい
  • 同じ水量なら本数が少なくて済む
  • ケース単位で備蓄しやすい

一方で、災害時に配布するときにはコップなどが必要になる場合があります。

500mLのメリット

  • 1人ずつ配りやすい
  • そのまま持ち出せる
  • 開栓後に複数人で共有しなくて済む
  • 衛生管理がしやすい

反面、100人、300人規模になると本数が非常に多くなります。

そのため法人では、
共通備蓄は2L、個人配布・持出し用は500mL
というように、両方を組み合わせる方法も考えられます。例えば、全体の7〜8割を2Lの共通備蓄、2〜3割を500mLの個人配布用にする方法もあります。

8.PET・アルミ缶・紙パック、保存水の容器は何が違う?

最近は、水の容器もPETだけではありません。
アルミボトル缶や紙パックの商品も増えています。
ここで重要なのは、
「缶だから長持ち」「紙だから短い」と容器だけで決めないこと
です。

PETボトル

防災用保存水では現在もっとも一般的です。
サイズの選択肢が多く、500mLから2Lまで揃えやすいことがメリットです。
また、長期保存用では通常より厚いPET容器や強い段ボールを使用する商品があります。富士ミネラルウォーターでは、この設計により5年6か月保存期間を設定しています。(【公式】富士ミネラルウォーター オンラインショップ)
法人備蓄では、商品数が多く、価格・保存期間・容量を比較しやすいことが大きな強みでしょう。

アルミ缶・アルミボトル

アルミは遮光性があり、リサイクル性にも優れた容器です。
ただし、
アルミだから必ず10年保存というわけではありません。
例えば富永貿易のアルミボトル缶入りミネラルウォーターは、防災備蓄やローリングストックを想定した商品ですが、賞味期間は製造から3年です。(富永貿易株式会社)
缶を選ぶ場合も、容器素材ではなく、個々の商品に表示されている保存期間を見る必要があります。

紙パック

環境負荷を抑える観点から、紙パックの水も登場しています。
富士ミネラルウォーターの紙パック商品は、内側にアルミ箔を使用して遮光し、中身が紙へ直接触れない構造になっています。
一方、同商品の賞味期限は製造から1年です。(藤鉱鉱業)
また、同社では1L紙パックについて、同容量のPET商品と比較してプラスチック使用量を約75%削減したとしています。(藤鉱鉱業)
環境配慮という意味では面白い選択肢ですが、長期備蓄を目的とするなら更新頻度や管理負担とのバランスを考える必要があります。

各種容器の比較

9.つまり「容器」だけを見ても答えは出ない

実際の商品を見ると、

紙パックで1年
アルミボトル缶で3年
PETで5年超

という例があります。
もちろん、これがそれぞれの容器の限界という意味ではありません。
重要なのは、
PETか、缶か、紙かではなく、その商品がどの保存期間を保証しているか。
ということです。
法人で比較するなら、
保存期間・容量・保管スペース・更新頻度・価格
まで一緒に見た方がよいでしょう。

10.保存期間が長ければ長いほど良いのか?

ここまで来ると、
「では10年、15年と長い商品を買えばいいのでは?」
と思います。
ただ、これも単純ではありません。
例えば5年保存水と10年保存水では、
10年間で何回入れ替えるか
が変わります。
一方で、購入時の価格差もあります。
さらに、

人数が頻繁に変わる会社
拠点移転の予定がある会社
防災用品を毎年棚卸しする会社

では、必ずしも最長保存の商品が最適とは限りません。
だからこそ、次に見るべきなのは、
「保存年数が違うと、結局いくら違うのか」
です。
これは次の記事で、5年・7年・10年などの実商品を比較しながら見ていきます。

まとめ|保存水選びは「何年保存できるか」から始めない

防災用の水について調べていくと、最初に気になるのは、
「5年保存か」
「10年保存か」
「どこの水がおいしいか」
かもしれません。
しかし法人や学校では、その前に考えることがあります。

何人いるのか。
何日分を備えるのか。
その水をどこに置くのか。

1人9L。
100人なら900L。
ここまで考えて初めて、
500mLがよいのか。
2Lがよいのか。
何年保存が合理的なのか。
という商品選びに進めます。
特に水は、防災備蓄の中でも重量と保管場所への影響が大きい品目です。
「何を買うか」より、「本当に置けるか」。
防災用の水を考えるとき、まずそこから確認してみてはいかがでしょうか。

防災備蓄のご相談・お見積り

伊藤サプライでは、企業・学校・公共機関向けに、保存水・非常食・非常用トイレなどの防災備蓄品をメーカー横断でお見積りしています。
現在の人数や既存の備蓄を確認したうえで、不足分だけの追加や、保存期間の違う商品の比較にも対応しています。

※本記事の数量・制度等は2026年9月確認時点の公的資料・メーカー公表情報をもとにしています。仕様や賞味期限は変更される場合があります。

電話で相談(平日9〜18時)